07話 死に様を想う
あらすじ
高校生になり、友達と部活動見学に向かった一信《かずのぶ》。弓道部に入ろうかと考えて、人だかりが無くなっても見学を続けていると優しげな部長から声をかけられ道具を見せてもらえることに。そこで遅れてやってきた三年生の先輩 高木(たかぎ)と出会う。
物憂げな表情で無口な高木は、冷たい印象を受けるが一信は次第に彼の優しさに気づいていく。弓を引く姿の美しさに惹かれ、高木自身へも惹かれていく一信。最初は困ったようにしていた高木も少しずつ心を開くようになり、明かされていく高木の危うさ。人間の醜さ、鬱屈を想いながらも、少年たちが愛とは何なのか考えていく物語。
【死に様を想う】
高木は、一信が帰り一人になった家の中で先程の会話を思い出していた。(ちなみに一信はあのあと映画の感想を楽しそうに話して満足気に帰っていった)
二人きり、幸も不幸もなく死んでいく。その情景に自分の中のなにかが疼いた。一信が脳裏に浮かべた、まるで十七世紀イタリアのバロック絵画を思わせる激しいコントラスト、砕け散った頭と苦しみ喘ぎながら笑う顔は互いに見つめ合っていることで奇妙な統一性を生み出している。白い舞台の上、スポットライトを浴びながら果てる。その周りは闇に包まれて……。
『綺麗じゃないですか』と言われた時、俺はその通りだと思った。
あの時、俺はあいつと一緒に死ぬことを肯定していた。自然と、無意識のうちに。
ならば現実では?
絵画を抜け出した俺たちはどのように死ぬのだろう。もしも互いに、大きな事故や病気もなく年老いて死ぬとしたら。一信の言った幸福な終わりがおとずれるとしたら。そしてそれが、この先、俺があいつと一緒にいるのを辞めた未来の先にあったら。
あれは
俺の知らないところで
俺の知らない人間と
俺の知らない顔で
俺の知らぬ間に死ぬのだろうか
それは、それは──……。
──窓の外から、遠くの方に桜が見える。少しずつ膨らんでいくつぼみは、毎日見ていると代わりばえが無いように思うのに、気がついたときには、さんざめく咲いている。
いつの間に開き始めたのだろうか、色づいたのはいつで、そしてつぼみをつけたのはいつだろうか。
俺は知らない。
コメント