救わぬ神より 救う化け物を愛す 01話

作品
1話 悪しき慣習

【あらすじ】
貧しい村で生贄に捧げられた少女は、山奥の社に住んでいる神と出会う。神の滋養になるため食い殺されると思っていた少女だが、神は少女を気に入り側に置くことに。
次第に明かされる神の本性。果たしてそれは本当に神なのか、それとも……。

 この時代、安定した暮らしを送ることが難しい村にはどこにでもある習わしだった。干ばつによる飢饉や疫病、あらゆる自然災害に対してなすすべを持たない人々は、とかく神に助けを求めた。必死に祈り、歌や踊りで神とつながりを持とうとする。当然その中に、生贄を捧げる行為が存在することは、想像に難くない。  この村も、例にもれず生贄を捧げていた。それは四年に一度、初潮を迎えたばかりの子女を、神の住まう山奥の社に捧げるというものだった。題目は花嫁である。したがって捧げられる少女たちはみな、白無垢で華やかに送り出される。けれどもその実情は、親のいない子供であったり、もしくは酷く貧乏であったりする家の子供にその責を押し付けている。そんなもの、だった。けれども、そんなものであっても得体の知れない『神様』は、それを受け取り、村にそれなりの安定を与えた。  しかし、その年は違例の年だった。まだ前回の生贄から三年しか経たないうちに、厳しい日照りが続いたのだ。田畑は干からび、村人は祈りを捧げたが、一向に雲一つない青空が広がっていた。村の長が集まり、話し合って、辿り着いた解決方法は───一刻も早く新しい生贄を捧げることだった。  果てしなく、愚かだと思うけれども、生きるためには必死だった。捧げられる娘がどうなるかなど、誰にも分からない。想像はついたけれど、同情をしている余裕はない。何十年もの間、確かに生贄によって村は大きな災いもなく、決して満ち足りてはいなかったけれども、存続することが出来たのだ。四年に一度、どうせたいして食い扶持を稼げない子供を見殺しにすれば、村全てが助かるというのなら、安いものだった。  だから、その娘は通常よりも一年早く、犠牲となった。

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